緑内障情報

目次

 1)緑内障患者さんの数
 特報 緑内障患者さんの数(多治見スタディ)
 2)緑内障とは
 3)緑内障の原因
 4)眼圧とは
 5)眼圧計の種類
 6)眼圧を決める物
 7)視力と視野の変化
 8)緑内障の種類
 9)高眼圧症について
10)正常眼圧緑内障
11)開放隅角緑内障の病像
12)閉塞隅角緑内障の病像


1)緑内障患者さんの数 目次へ
  1992年に発表された統計資料によると、40才以上の人の緑内障有症率は3.6%で、
  緑内障の人は30人に1人と言うことになります。
  3.6%の内訳は開放隅角緑内障(普通、緑内障と言われる人)が0.6%、正常眼圧
  緑内障(緑内障ですが眼圧が正常範囲の人)が2.0%、原発閉塞隅角緑内障(急性緑
  内障を起こす可能性が多い人)が0.3%、その他の緑内障が0.6%です。
  したがって正常眼圧緑内障の人は開放隅角緑内障の人の約3倍居ると言うことになります。
  更に驚くことに、この調査によって新規に緑内障が発見された人の割合は緑内障
  全体で80%。正常眼圧緑内障では実に95%に昇っております。
  即ち正常眼圧緑内障の大部分の人が自分が緑内障であることを分かって居なかった事にな
  ります。これは大変恐ろしいことです。

特報 緑内障患者さんの数(多治見スタディ)
   1)の患者さんの数は、1988年から1989年に調査され、1992年に発表された統計資料ですが、
   2000年9月より、2002年の3月まで、行われた疫学調査の結果が、2003年3月に
   日本緑内障学会より発表されました。
   では今まで、何故この数字をここに書き込まなかったかと、言いますと、理由があります。
   (1)1992年発表の調査人数は約8,000人。2003年3月のは約3,800人。
   (2)1992年の時は、全国7ヵ所で調査されたのに、2003年発表された調査は、多治見市という
      限られた地方で行われた。 (従って、多治見スタディと言われて居るのだが、地方の特性
      と言う物は無いだろうか?の疑問が残る。)
   (3)調査結果が、今までの統計と余りにも違い過ぎる。
   以上の理由で、ここに掲載するのを待っていました。
   臨床医学的に、訂正或いは取り消される部分が有るのではないか?という事です。
   しかし 約1年たった今、未だ変更が無いので、ここに記載します。
     御参考迄に。 ○1992年発表の調査では、受診率は50%(16,000人に対し8,126人受診)。
       2003年発表の調査では受診率は78%(3,870人に対し3,021人受診)。従って
       受診率が50%と低い調査は信頼性に問題が有ると言う、統計学的な意見が有ります。
       ではマスコミが行う、回答率が50%程度の、小泉内閣の支持率は信頼できませんね!
       ○(多治見スタディ)を行った調査団の親分は、日本緑内障学会の理事長、北沢克明氏
       (岐阜大学名誉教授)です。批判はでにくいでしょうね。

   多治見スタディの結果は
   (1)40才以上の17人に1人は緑内障である。
   (2)開放隅角緑内障と診断された人の、92%が『正常眼圧緑内障』である。
      ( 緑内障の検査は、「眼圧だけでは駄目である。」 )
   (3)今回の調査で、緑内障と診断された人の、9割以上の人が、未治療であった。

   
   上の《1)の患者さんの数》と比較してみて下さい。またまた恐ろしい事になります。     
        
2)緑内障とは 目次へ
  眼圧(眼球の圧力)が上昇することに因って、視神経(物を見る時に使われる神経)が
  障害を受けて起こる病気です。
  障害は「急性緑内障」の時の様に一時的な障害であって、治療によって改善することも
  あるが、「慢性緑内障」の多くの場合は、持続的な眼圧の負荷によって視神経が器質的
  に障害を受け、その障害(視野、視力低下等)は非可逆的で有る場合が多いと言われて
  います。
  それに対して、眼圧の上昇がないのに典型的な緑内障の所見と障害を生ずる例が有り、
  これを「正常眼圧緑内障」と言って居ります。
  又一方、眼圧の上昇は認められるが、緑内障の所見と障害を全く示さない場合も有り、
  これを「高眼圧症」と言って居ります。
  ここで「緑内障の原因は何か?」との疑問が生じますね。
3)緑内障の原因 目次へ
  前回「緑内障とは眼圧が上昇して起こる病気」と書きました。
  では、眼圧の上昇が無くても起こる「正常眼圧緑内障」。眼圧の上昇が有っても視神経
  に緑内障の病変が起って来ない「高眼圧症」が有るのは何故でしょうか?
  結論から言いますと、本当の緑内障の原因は未だ分かって居ません。
  しかし眼圧が大きな要素になって居るのは確かです。
  では、「正常眼圧緑内障」と「高眼圧症」の違いは何でしょうか?
  視神経が眼球内に入る付近の組織が弱い人は正常な眼圧でも神経が冒され 「正常眼圧
  緑内障」になり、その部の組織が強い人は緑内障の病変が現れず「高眼圧症」の状態に
  あると云われて居ます。
  現在、その辺の研究が盛んに行われています。
  その他の原因として、循環障害、自己免疫等が上げられて居ます。
  又 遺伝的要因もあると云われており、具体的な遺伝子座が分かって居る物もあります。
4)眼圧とは 目次へ
  眼圧とは眼球内の圧力を云いますが、臨床的に眼球内に圧力計を挿入することは出来
  ませんから、眼球の堅さで圧力を推計ることになります。
  ここで問題になる事は、例えば卵の様に殻は非常に固いが中の圧力はゼロに近いとゆう
  場合いも有るので、眼球壁自体の堅さの影響の少ない測定法方が考えられて居ます。 
5)眼圧計の種類 目次へ
  眼圧計には大きく分けて、圧入眼圧計と圧平眼圧計が有ります。
  圧入眼圧計は、角膜(黒目)に一定の力を加えて、その変形量を測定する眼圧計で
  圧平眼圧計は、角膜に一定の変形を生じさせる為に必要な力又は時間を測定して
  眼圧を計る機械です。
  代表的な物を2〜3紹介します。 
  1)シェッツ眼圧計
    古くから使われて居る圧入眼圧計の代表。
    角膜の上に乗せる重錘を二種類にすることで、眼球壁の堅さの眼圧に対する
    影響を少なくしている。
  2)ノンコンタクト眼圧計(非接触眼圧計)
    角膜に空気を噴射し、一定面積を圧平するに要する時間を測定する事で
    眼圧を測定する。
    検者の主観が入らず、角膜に触れないので感染の危険が少ない。
  3)ゴールドマン眼圧計
    圧平眼圧計の代表。
    細隙灯顕微鏡の前に座って測定する。
    角膜上の一定面積を圧平するに要する力を測定し、眼圧を計る。
  その他、手持ち式のトノペン、パーキンス等が有ります。
   
6)眼圧を決める物 目次へ
  眼球の中には、房水と云う透明な水が流れています。
  (下に眼球前部の断面図が有りますがクリックすると拡大します。) 

 

    房水は毛様体から後房内に入り、瞳孔から前房に移り、隅角のシュレム管からその90%が
   眼球外に出て行きます。
   (後の10%は、ぶどう膜−強膜流出路から眼球外に出ると言われています。上図参照)
   「
10の房水」が眼球内に入り、「10の房水」が出て行けば、眼球内の房水の量は同じですが、
   出て行く量が8〜9だとすれば、2〜1の量の房水が眼球内に増えていく事になります。
   従って、テニスのボールに空気を詰めた様に、中の圧力(眼圧)は上がって行く事になります。
   隅角は詰まったり、狭くなりやすいので、その事が眼圧上昇の原因になるのです。      
7)視力と視野の変化 目次へ
 
緑内障の場合、かなり病状が進んでも視力が落ちない事が多いのです。
  緑内障の主症状は視力低下ではなく、視野の狭窄だからです。視野の狭窄が中心部にかかってくると
  視力の低下が始まってきます。
  緑内障の怖いのは、症状がゆっくり進んだ場合、視野、視力の変化に患者さん本人は気が付かない場合が
  多く、視野狭窄、視力低下に気付いたときには、病状はかなり進んでおり、治療により視野、視力が快復する
  事は殆ど無いからです。 (急性緑内障の場合は違いますが)
  従って、それからの治療は視野狭窄、視力低下の進行を抑える為の物にまります。  
8)緑内障の種類  目次へ  
  色々な分け方が有りますが、次の様な分け方が、一般的に使われて居ます。
  ○高眼圧症
  ○開放隅角緑内障 (正常眼圧緑内障を含む)
  ○閉塞隅角緑内障
  ○その他の緑内障 (ポスナーシュロスマン症候群、ステロイド緑内障、先天性緑内障等)
9)高眼圧症について  
目次へ
  高眼
圧症とは、《2)緑内障とは》と、《3)緑内障の原因》で述べた様に、眼圧が統計的な正常値を上回っても
  緑内障の症状を起こさない人の状態を言います。日本では40才以上の人の約1.4%がこの状態です。
  緑内障の前駆状態と考えられていましたが、必ずしも緑内障になるわけではありません。
  しかし 1年に1%の割合で緑内障に移行すると言われて居ります。
 【症状】は特に有りません。「症状が無いから、高眼圧症なのだ」とも言えます。
 【治療方針、治療】 眼圧、眼底検査、視野検査等を定期的に行う。
  危険因子のある場合(家族に緑内障のある人、眼圧が特に高い場合等)、主治医と相談の上治療を行う。
  治療は原発開放隅角緑内障と同じです。
10)正常眼圧緑内障    目次へ
  開放隅角緑内障との違いは、現在 分かっている範囲では、「眼圧が正常である」と言う事だけです。
  では何故「眼圧が正常なのに」緑内障が起こるのか(?)の疑問に(1)視神経の眼圧に対する感受性の
  違い、(2)循環障害の関与等が言われています。 《 3)緑内障の原因を参照 》
  【症状】は開放隅角緑内障と同じですが、臨床所見に多少の特徴が有るので簡単に書いてみます。
   ○乳頭出血(眼底の視神経辺の出血、線状のことが多い)の現れる事が多い。
   ○視野欠損の起こる場所は視野の中心部で、上方に出ることが多い。
  【治療、治療方針】
   大筋で開放隅角緑内障と同じです。従って治療は開放隅角緑内障の項を参考にして下さい。
   しかし 次の様なことが言えます。
    (1)治療する場合、眼圧は低い方が良い。(10mmHg程度だと視野は悪化しにくい)
    (2)「循環改善剤(血管拡張剤、カルシウム拮抗剤)、ビタミンB12(内服)等を使用し、緑内障性視野異常の
      改善、或いは進行停止が得られた」、と言う報告が有ります。
11)開放隅角緑内障の病像  目次へ
  以前はこの形の緑内障が最も多く、緑内障の基本的な病型と言われておりました。
  しかし 《1)緑内障患者さんの数》、《多治見スタディ》を御覧になると分かるように、正常眼圧緑内障を
  開放隅角緑内障の中に含ませず、別の種類と考えれば、断然 正常眼圧緑内障の数は多くなります。
  (《8)緑内障の種類》では、
正常眼圧緑内障は開放隅角緑内障の「一病型」として含ませていました。)
  多治見スタディによれば、正常眼圧緑内障の有病率は3.60%で、開放隅角緑内障の0.32%を大きく上回ります。
  簡単に言えば、「開放隅角緑内障の人は正常眼圧緑内障の人の、1/9しか居ない」と言う事です。
  しかし この種類の緑内障が緑内障の最も一般的な病型で有る事は、今でも変わりません。
  【症状】
   (1)初期には自覚症状はないが、進行してくると、暗点や視野の狭窄を感じる。更に進行すると視力が低下する。
   (2)眼圧が高い時は、霧視、虹視(光の周りが、にじみ、虹の様に見える)を感じる事がある。
  【検査の結果】
   (1)眼圧の上昇は20〜40mmHg程度の事が多い。
   (2)隅角は広く、色素の沈着が少ない。
   (3)視神経乳頭(視神経が眼球内に入ったところ)の陥凹は拡大し、神経線維層の欠損(網膜が
     楔状に黒味かかった濃い色に見える)が認められる。乳頭辺に時々線状の出血が認められる。
   (4)視野の変化は、中心近くの弓状暗点から始まり、周辺狭窄に至る事が多い。
  【予後】治療をしなければ、病変は非可逆的に進行する。眼圧が高いほど進行は早い。

12)閉塞隅角緑内障の病像   目次へ
   隅角の閉塞が有れば、診断は確定するが、眼圧が上昇して居ない時は、難しい時もある。
   虹彩の癒着が有れば、ほぼ間違えない。
   眼圧上昇の発作と寛解を繰り返し、重篤な状態(失明)に陥る事がある。 
  【症状】発作時以外は、自覚症状の乏しいことが多い。
  【発作時の症状】眼圧は40mmHgより60mmHgあり、時には80mmHgの時もある。
    強い眼痛、頭痛、吐き気、嘔吐、視力低下を訴える。以上の症状より脳内病変を疑われ、
    脳外科を受診し、治療の遅れの原因になる事もある。
    瞳孔は中等度散瞳し、対光反射(光を当てると瞳孔が縮まる反射)は低下する。
    視神経乳頭(眼の底に神経が入って来た所)は充血、浮腫を生じる。
  【寛解期の治療】将来の発作を阻止する治療、例えばレーザー虹彩切開術等が必要。
  【発作時の治療】一刻も早い眼圧降下処置が必要である。48時間以上放置すれば、失明の
    確率が高い。
    薬物療法  高濃度ピロカルピンの頻回点眼。高張浸透圧薬の点滴静注。
            炭酸脱水酵素阻害薬の内服又は静注。 等
    手術療法  レーザー虹彩切開。周辺虹彩切除術。 等
  【予後】適切な治療を行った場合と、そうでない場合の差が多い。